イコロの森ミーツ・アート 2021
イコロの森は、新たな価値観の探求を目指して、2019年に引き続き、
再び現代アートの野外美術展を開催致します。
気候変動、環境破壊、そしてパンデミックといった切迫した現代に
環境アート(生活環境、自然環境、現代アート)の在り方を問いかけます。
2021年9月16日(木)-26日(日)10:30 - 16:30 (公開制作9月11日~15日)
<出品作家>
會田千夏 五十嵐ユースケ 上ノ大作 川上りえ キシモトユキオ
澁谷俊彦 中村修一 林亨 菱野史彦 八子直子
We must create something for the future.
What should we coexist with for the future? What should we live together with ?
We live for the next. We will live to new normal.
会場 :イコロの森「森の学校」周辺 雑木林エリア 森の学校ギャラリー Garden Cafe チセ
主催 :イコロの森ミーツ・アート実行委員会
共催 :イコロの森
協賛 : 渡辺パイプ株式会社
運営協力:森の学校(NPO法人いぶり自然学校)寿珈琲
助成 :(公財)道銀文化財団 道銀芸術文化助成事業
會田千夏 Chinatsu Aita 「星の足跡」
様々な草花や木々が生えている場所に行くと、心が子供の頃に戻るように感じます。
土に近い位置までしゃがんで、草花と同じ高さになれば、子供の頃に見てた風景と重なるからでしょうか。低い、足元に広がっている世界に身を潜めていると、草の匂い、風が枝葉を撫でる音の中で、小さな虫や動物達、また、古くからそこに居る形を持たない存在の気配を感じるような気がしてきます。絵は、そのような形を持たないものに色やシルエットを与えて見えるようにすることができますが、自然の中では既にもう、至る所に「在る」のです。「在る」もの達と一緒に小さくなって遊ぶことができたら、その痕跡を気配として残せたら、と考えています。
企画展グループ展など(※主催者抜粋)
2021 道銀芸術文化奨励賞受賞作家展(北海道立近代美術館)
2020 高橋靖子 八子直子 會田千夏(ギャラリー門馬 札幌市)
リトル・モンスター ~愛しき者たち(不忍画廊 東京都)
2019 imagenation dead imagine(不忍画廊 東京都)
線の芸術 Ⅱ(不忍画廊 東京都)
2018 VOCA展 2018(上野の森美術館 東京都)
八子直子 鴻上宏子 會田千夏 三人展(ギャラリーエッセ 札幌市)
2014 Sprouting Garden-萌ゆる森-(札幌芸術の森 佐藤忠良記念子どもアトリエ 札幌市)
光州文化財団交流展(光州国立博物館 韓国)
2011 第20回 道銀芸術文化奨励賞受賞記念 會田千夏展(らいらっく・ぎゃらりい 札幌市)
札幌美術展 Living Art―日常―やさしさはそばに(札幌芸術の森美術館 札幌市)
2007 VOCA展2007(上野の森美術館 東京都)
2005 第24回損保ジャパン選抜奨励展(損保ジャパン東郷青児美術館 東京都)
個展
2018 會田千夏展 有島武郎青少年公募絵画展30周年・初代有島記念館開館70周年記念事業(有島記念館 ニセコ町)
2016 會田千夏展 “the fissure ~裂罅~” (ギャラリーRetala 札幌市)
2013 會田千夏個展 “portrait”」(不忍画廊 東京都)
會田千夏個展 “from the forest” (ギャラリーRetala 札幌市)
2011 N.P.blood21 vol.9 會田千夏展 (北網圏北見文化センター美術館 北見市)
2009 會田千夏個展(アートホール東洲館・うなかがめーゆ美術館 深川市)
2008 會田千夏個展”SNOW WHITE” (不忍画廊/東京)
Chinatsu AITA Exhibition at Mt.HARUKA (Dala Space 小樽市)
2005 會田千夏~katari-jima~ (ペッパーズ・ロフト・ギャラリー 東京都)
2004 會田千夏展 (ギャラリーたぴお 札幌市)
受賞
2011 北海道銀行芸術文化奨励賞
2010 JRタワー・アートプラネッツ2010展(JRタワー・プラニスホール 札幌市) 「優秀賞」
「共生」の森―「イコロの森ミーツ・アート2021」によせて ①
「イコロの森」は、苫小牧市北東部の森林のなかで、北海道らしい風景づくりと、人と自然が共生する里山の営みを実践すべく、2008年にガーデンプランナーの工藤敏博によって創設された自然庭園である。総面積約100ヘクタールの敷地の中には、耐寒性に優れた品種のバラを収集した「ローズガーデン」、北海道に自生する植物で構成した「ナチュラルガーデン」、自然の植生そのままの森を探索できる「ウッドランドガーデン」など、豊かではあるが人が立ち入るのを拒むような厳しさをもつ原生の森とは別様の、適度に人の手が加えられた明るく温かみのある空間が広がる。
「イコロの森ミーツ・アート」は、そうした工藤の思想と実践に共感した美術家の澁谷俊彦が中心となって、「イコロの森」敷地内の森を舞台に展開する野外美術展である。「共生Symbiosis」をテーマに2019年9月に開催された第1回展には、澁谷が「厳選」して呼びかけた末次弘明、半谷学、菱野史彦、中村修一が参加。ミズナラやシラカバなどが散生し、まばらながらもシダやササ、地衣類がたくましく林床を形成する、文字通り「イコロ(アイヌ語で宝物の意)」のように美しい森のなかで、各作家が思い思いに作品を展示した。ただし当時の率直な感想を記しておけば、筆者には、それぞれの作家の個性が発揮されて個々の作品としては面白く、しかしながら、展覧会としての明確な方向性は、やや見出し難く感じられた。あるいは「ハルカヤマ藝術要塞」のような先例がなければ、そうした感想を抱かなったかもしれない。
「ハルカヤマ藝術要塞」は、小樽市春香山の麓にある札幌出身の彫刻家・本郷新のアトリエ跡と、現在は廃墟となった観光ホテル周辺の私有地約3ヘクタールを会場として、最大時で国内外あわせて76名の作家が参加した大規模な野外美術展である。「石狩湾を眺望する荒野に新しい息吹を吹き込み、参画するアーティストの多様な感性によって、“春香山”を北海道のアートの拠点=「藝術要塞」に変容させたい」という目的のもとで2011年から2017年まで隔年で全4回開催され、モチベーションの「枯渇」―それは目的を達成したがゆえの充足感と表裏であったと思われるが―とともに、10年5回の計画を前倒しして終息した。すでに指摘されているとおり、「ハルカヤマ藝術要塞」は、作家同士が展覧会のテーマを共有し、それにもとづいて制作を行う運動体ではなく、春香山という場をアートで「遊ぶ」ための自由な集まりであった。それゆえか会場は自由な雰囲気と熱気にあふれ、継続が熱望されるほど多くの作家と鑑賞者を惹きつけた。幅広い世代の作家が協同し、北海道の美術史上で類例のない規模で開催された野外美術展として、多くの作家の表現と、美術展のもつ可能性とを大きく広げたことも事実であろう。しかし反面、筋違いであることは重々に承知しつつも、これが運動体として継続的な活動を行っていったならば、北海道の美術の状況にどれほど大きなインパクトを残しただろうかと夢想せずにはいられなかった。
かたや「イコロの森ミーツ・アート」は展覧会としてのテーマを明確に掲げ、それを作家たちがそれぞれに消化して表象した作品を並置することで、帰納的に「共生」のあり方を探ることを目指す合目的的な展覧会であると見て取れた。さらに全部で4回開催された「ハルカヤマ藝術要塞」のうちの3回に参加し、功罪が半ばする同展の様子を目の当たりにしてきた澁谷が、同展終息後にあえて野外美術展を立ち上げるとなれば、「ハルカヤマ藝術要塞」のポジティブな部分を肯定してその継承を目指すか、あるいはネガティブな部分を反省して別の野外美術展の形を目指すといったように、何かしらの明確な方向性を示すことを筆者としては期待していたわけである
とは言え、期待はずれだったなどと言うつもりは毛頭ない。企画立案、作家選定と出品交渉、「イコロの森」との調整と会場の準備、搬入・搬出の立ち会い、広報、会場での来客対応等々、展覧会に関わるすべてを主導し、自らも出品作家の一人として作品を制作した澁谷の献身がなければ、そもそもこの展覧会は実現していないのだから。そしてなにより、美しい森のなかで、周囲の自然と調和しつつ毅然とした佇まいで存在を誇示する作品たちを目の前にすれば、展覧会としての方向性を云々することなどせずに、個々の作品との対話に静かに浸りたい気分にもなってこよう。
しかしながら、おそらくは「イコロの森ミーツ・アート」を「共生」というひとつのテーマの表現に向かって出品作家全員が強い意志で取り組む運動体とすることを、誰よりも求めていたのは澁谷自身であったに違いない。2020年こそコロナ禍により開催が中止となったものの(かわりに出品予定だった作家たちが制作した作品のためのイメージドローイングやイメージ動画、試作などをWeb上の展覧会として公開した)、その繰り越しとしての開催となった2021年の本展について言えば、設置場所の原状復帰が可能な作品にかぎるといった出品のルールが一段と徹底されていたほか、各作品の展示空間が所々でクロスオーバーし、互いに借景しあうことによって作品同士の「共生」が生じていたことが、そのことを象徴的に表していたように思われる。本展の出品作家たちが、不測の「共生」すら楽しむことができるような人間性も含めて「厳選」されたからこそ可能だったということもあろうが、澁谷が本展の準備段階から、「共生」というテーマの共有を徹底するためにいかに腐心したかは、この点のみからでも見て取れた。
「ウィズコロナ」や「ニューノーマル」と呼ばれる今日の状況が、本展の要諦となったことも疑いようがない。コロナ禍がもたらしたこれまでとはまったく異なる日常と、今後、おそらくは相当の長きにわたってこの目に見えない脅威と隣り合わせで生きなければならないという展望が、出品作家たちに「共生」というテーマをかつてないほど身近に感じさせ、共感を生んだはずであろうことも想像に難くない。「共生」は、澁谷にとっては、コロナ禍が訪れる前の2011年頃から野外インスタレーションの「Generation」シリーズを通じて思索を深めてきた大きな課題でもあるのだが、それがここにきて、幸にも不幸にも、時宜を得たと言えようか。②へ続く
門間仁史(もんまさとし/北海道立旭川美術館主任学芸員)
森の学校ギャラリー
「星の足跡」
五十嵐ユースケ Yusuke Igarashi 「気付きの網」
物事にはルールがある。私たちはその中で生きている。
そのルールがあるから境界ができる。ある意味、境界に守られている。ただし、全ての人がルールに従うとは限らない。
必ず一定数破る人がいる。それはしょうがない。
その先に魅力的な物があるのだから。ただし、その為に新たなルールが増えていく。
そしてそれをまた超えようとするものがいる。
いたちごっこ。結果、自分たちの首をどんどん絞めていく。
コロナもそう。
一定数守らない人がいる。それはしょうがない。
その先に魅力的な物があるのだから。その先に何が待っていても、何が起きても... ここは自然の森。
その先には生態系が存在している。可愛い小動物ばかりではないのはおわかりでしょう。
その境界線に私は網を張る。
気付きの網。いわば、セーフティーネット。
普段は主張しない 辺りに溶け込んでいる。朝露やそよ風、葉っぱがくっついたり、虫が止まったりして
ときたま目に留まる。それを目にしたら気付いてほしい。
その先は...
企画展グループ展など(※主催者抜粋)
2017 茶廊法邑企画展(札幌市)二人展五十嵐雄祐×岸本幸雄『建築と美術 vol.6 したたり』
2016 UN40 40歳以下の建築家による建築以外の表現展(札幌市)
2015 UN40 40 歳以下の建築家による建築以外の表現展(札幌市)
キオクノキロク‐ギャラリー門馬の 4168 日-(札幌)
ハルカヤマ芸術要塞 2015 (小樽市)
つながろう 2015(札幌市)
2014 UN40 40歳以下の建築家による建築以外の表現展(札幌市)
2013 UN40 40歳以下の建築家による建築以外の表現展(札幌市)
つなげよう+つながろう 2013(札幌市)
受賞
2016 第2回 JCD北海道デザインアワード 審査員特別賞 (洋菓子ルモンド)
2014 第1回 JCD北海道デザインアワード 優秀賞 (TSURU CAFÉ) (TRATTORIA CUGIRA)
現在
2018 年~企画ユニット「P∞ARTNER」 空間構成担当 (グランビスタギャラリー、ADW などにて、展覧会企画)
2020 年~札幌市立大学デザイン学部 非常勤講師
「気付きの網」
上ノ 大作 Daisaku Ueno NET work
近年自分が作っている、竹ひご等を使った作品「Nest」(巣)のシリーズで、今回は蜘蛛の巣をイメージして作りました。 蜘蛛は、見えにくく粘着性のある糸を体から出して巣を作り 虫を捕まえますが、自分はカラフルな毛糸を使って、観る人を捕まえられたらと思います。
タイトルを「NET work」としたのは、最近のSNSやらの人の繋がりに思う所が有って付けた名前ですが、長くなりそうなので別の機会に。
主な企画展 個展 グループ展等
2021 道銀芸術文化奨励賞受賞作家展 ( 道立近代美術館 / 札幌 )
2020 「 上ノ大作 陶展 」( 画廊 ぐれごりお / 京都 )( 2016,2018 )
「 Self-portrait 」( グランビスタギャラリーサッポロ / 札幌 )
2019 9 LANDART FESTIWAL ( Podlaski Przelom Bugu / ポーランド )
Chicago-Obihiro Extension ( The Hairpin Arts Center / シカゴ )
つくば国際アーティストインレジデンス ( つくば ふれあいの里 / つくば )( 2018 , 2017 )
2018 Our Art working ( シカゴ、マディソン )( 2017 , 2016 , 2015 )
Chicago-inspired Art from Japan ( 737 NORTH MICHIGAN / シカゴ )
2017 「 上ノ大作々品展 」( らいらっくぎゃらりい / 札幌 )
Obihiro Contemporary Art ( 帯広 , 他 ) ( 2016 , 2015 , 2014 )
札幌国際芸術祭 ( UNTAPPED HOSTEL / 札幌 )
ハルカヤマ藝術要塞 ( 春香山 / 小樽 )( 2011 , 2013 , 2015 ) 2016
「 CLOUD 」( 苫小牧市美術博物館 中庭 / 苫小牧 )
2015 「 上ノ大作 器展 」( GALLERY 門馬 ANNEX / 札幌 )
2014 「 森ノ生活 」( ギャラリーマロニエ / 京都 )
Sprouting Garden - 萌ゆる森 - ( 札幌芸術の森 / 札幌 )
「 、ノ記 」( ギャラリー Retara / 札幌 )
2013 「 ムノウノ人 - 3 」( 法然院講堂 / 京都 )
「 森ノ生活 」( 黒い森美術館 / 北広島 )
2012 「 ムノウノ人 - 2 」( 関口雄揮記念美術館 前庭 / 札幌 )
2011 「 ムノウノ人 」( GALLERY 門馬 ANNEX / 札幌 )
2010 「 上ノ大作 作品展 」( 北のレンガギャラリー / 帯広 )
陶 = 表現 ( GALLERY 門馬 ANNEX / 札幌 ) 試みの茶事 EZO 茶会 ( GALLERY 門馬 , ギャラリー創 , CAI02 / 札幌 2009 「 上ノ大作 作品展 」( GALLERY 門馬 ANNEX / 札幌 )
2007 「 上ノ大作 作品展 」( ギャラリー大通美術館 / 札幌 )
受賞 2016 第26回道銀芸術文化奨励賞
NET work
川上りえ Rie Kawakami Flat and Dynamism
森の木々をキャンパスにして、水平面の表現を試みる。それは、地球の46億年という時の経過の中で、
そこにあったかもしれない水面を意図するものでもある。
大地や草木からなる複雑な起伏と対比させ,燐とした空気を生み出す。そこに佇み、大地の息吹に想いを繋ぎたい。
企画展グループ展など(※主催者抜粋)
2020 Organ Worksによる現代舞踊「HOMO」舞台美術担当(KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ)
BENIZAKURA PARK ART ANNUAL 2020紅櫻公園(札幌市)
2018 JR Tower Art Planets Grand prix Exhibition 2018 プラニスホール(札幌市)
2016 Daegu Contemporary Art Restival in Gangjeong (大邱 大韓民国)
2015 知覚されるアート モエレ沼公園ガラスのピラミッド(札幌市)
2014 Conditional Landscape グシュテリツァ要塞教会敷地 内(Sibiu Romania)
Sprouting Garden 萌ゆる森 札幌芸術の森野外美術館(札幌市)
2013 Domani 明日展 国立新美術館(東京都)
個展
2019 「Landscape Will 2019」 札幌文化芸術交流センターSCARTS (札幌市)
2017 「Landscape Will -On the Ground-」ギャ ラリー門馬ANNEX (札幌市)
「Elements of Planet」 Fabulous Café (札幌市)
2016 “CAMPING NEAR THE WOOLEN MOUNTAIN.” ギャラリーレタラ(札幌市)
2013 札幌芸術の森美術館中庭インスタレーション「Landscape Will 2013」(札幌芸術の森美術館 札幌市)
プロジェクト
2015年 folding cosmos ヴィラサボア邸編 (Villa Savoye 、Poissy、France)
助成及び受賞
2014 S-AIR AWARDを受賞し、ブルーケンタール基金の助成によりシビウでのレジデンスプログラムに参加(Sibiu,
Romania)
2012 札幌文化奨励賞受賞
2007 ボーダー・アート・レジデ ンシーのレジデンスプログラムに参加(NM, U.S.A.)
2006 文化庁新進芸術家海外研修制度 の助成を受け、ロケーション・ワンロケーションのレジデンスプログラムに参可
(NY U.S.A.)
2004 フリーマン基金第11回アジアン・アーティスト・フェローシップ
©Satoshi Katono
©Seiji Yamagishi
Flat and Dynamism
キシモトユキオ Yukio Kishimoto わたしのいばしょ
ここなら大丈夫
息をころしてじっとして
急ぎや必要がなければ外に出てはいけない
ここなら大丈夫
じっとしていればヤツらは入ってこない
じわじわと迫ってくるようでとてもこわいけど
ここなら大丈夫
あかりはハッキリと見えはじめている
主な企画展グループ展など
2017 茶廊法邑企画展(札幌)
二人展 「インテリアライフスタイルリビング」(東京都)
2016 つながろう展(札幌チカホ)
2013 北海道の木の椅子100人100脚 展
2010 こどもの椅子展来場者投票1位 (ギャラリー創 札幌市)
2009 北海道立旭川美術館・企画展出品 (旭川市)
個展
2020 FABULOUS/ファビュラス(札幌市)
ギャラリー犬養(札幌市)予定
2018 茶廊法邑(札幌市)
café&bake Prunier(札幌市)
クロスホテルレストランhache(札幌市)
2016 TO OV café(札幌市)
TSURU CAFÉ(札幌市)
2015 ギャラリー門馬(札幌市)
六花亭福住店(札幌市)
2014 黒い森美術館(北広島市)
GALLERY kamokamo(札幌市)
2013 茶廊法邑(札幌市)
2012 六花亭福住店(札幌市)
六花亭福住店(札幌市)
2008 茶廊法邑(札幌市)
受賞
2004 朝日新聞社主催・第4回暮らしの中の木の椅子展「優秀賞」
「わたしのいばしょ」
澁谷俊彦 Toshihiko Shibuya Generation 2021 起源・発生
ますます見直しが迫られる自然と人間との関係性、その解決には人間中心主義からの脱却(ノンヒューマン)に他ならないと私は考えます。自然を支配(完全なるコントロール)するのではなく、寄り添うように上手に共生することです。私は生命循環をコンセプトとして 生命の起源、発生のイメージを呼び起こします。 今回の作品にはマップピン、待ち針、ビーズ、ゴルフティーが用いられています。それらはある種の魚類、両生類、軟体動物などの卵塊、きのこ、菌糸類または粘菌、変形菌の子実体の発生、繁殖のさまの景色をイメージしたものです。私は自らのインスタレーションを「マイクロワールド オブ ランドアート」と名付けました。広い空間で展開させますが、鑑賞者は至近距離で、観察するように鑑賞するためです。自らの営みやそれをとりまく環境に出会い直す媒介としてどう機能するかを、改めて問い直します。足元の小さな自然を見つめ直し、人間のこれからの在り方を問うための装置として機能することを願います。
主な企画展グループ展など (※主催者抜粋)
2020 森のオープンギャラリー 〈大きな木〉 澁谷俊彦展 (真鍋庭園 帯広市)
GEUMGANG NATURE ART BIENNALE ‘Nature Art Video Exhibition
「金剛ネイチャーアートビエンナーレ」ネイチャーアートビデオ展 (ヨミサン自然芸術公園 韓国)
2019 Northern Art Collaboration 2019 in Tampere (ガレリアロンガ タンペレ フィンランド)
イコロの森ミーツ・アート2019 (イコロの森 苫小牧市)
これまでも、これからも / 札幌グランドホテル開業85周年記念展(グランビスタ ギャラリー 札幌市)
2018 帯広コンテンポラリーアート2018 「河口」展 (新川河口周辺領域 札幌市 石狩市 小樽市)
2017 北の脈々2 North Line 2 (500m美術館 札幌市)
2015 思考するアート展 コトバノカタチ(北海道立帯広美術館 帯広市)
ハルカヤマ藝術要塞 (小樽春香山周辺) 2011~2015 (小樽市)
2014 クリエイティブ北海道 meets バンコク (バンコク タイランド)
2013 New City Art Fair in Taipei (松山文創園区 台北 台湾)
クリエイティブ北海道 meets 香港(セントラルオアシスギャラリー 香港)
2012 New City Art Fair in Taipei (崋山1914 創意文化園区 台北 台湾)
クリエイティブ北海道 meets 香港(セントラルオアシスギャラリー 香港)
個展 55回 : 札幌 東京 名古屋 京都 大阪 ニューヨーク
プロジェクト:スノーパレットプロジェクト(2011年より毎冬 北海道各地で開催。 シリーズは13回を数える)
ワークショップ : 2012 MUSEUM SCHOOL 「キンビで昆虫採集」(北海道立近代美術館 造形室)
受賞
2017 北海道文化奨励賞
2014 札幌文化奨励賞
1998 第24回ドイツ・オランダ・ベルギー美術賞展「優秀賞」
1993 第7回 橋の美術賞「大賞」(坂出市民美術館 香川県)
Generation2021 origin-birth
中村修一 Shuichi Nakamura emerge
植物の種や芽、胞子など生命力や植物の再生する力にひかれて、そこからインスピレーションをもらい、陶を素材に作品を作っています。イコロの森のもつ静寂な空気感の中で、のびやかに立つ木々に目が行きますが、緑豊かな森を印象づけるのは、足元にある植物ではないかと思っています。その植物の一部として作品が同化できたらと思っています。
花壇や畑の整備で、雑草を抜いている自分に矛盾を感じるときがあります。花壇はきれいになり畑の作物は成育もよくなるのですが、それは、私の言い分。共存のためにエリアを分けることもこちらの言い分。共存や共生・同化などを制作のコンセプトとしているが、そのようなことを考えることも制作をすることの意義だと思っています。
主な企画展グループ展など
2020 フォルムーイメージ(ギャラリーレタラ 札幌市)
2019 イコロの森ミーツ・アート2019(イコロの森 苫小牧市)
2019 new point展(さいとうギャラリー札幌市~2004)
2017 ポンペツ芸術要塞(むかわ町穂別)
ハルカヤマ芸術要塞(春香山山麓 小樽市)
2016 第三回和を楽しむ(茶廊法邑 札幌)
2015 ハルカヤマ藝術要塞(春香山山麓 小樽市)
2013 JRタワー アートプラネッツ展(プラニスホール 札幌市)
第三期六花ファイル
2012 中村哲泰おやこ展(夢創館/恵庭)2009(道新ギャラリー 札幌市)
2003 中村修一・前川アキ展(時計台ギャラリー 札幌市)
2002 友野直実・中村修一展(大同ギャラリー 札幌市)
1992 松原成樹氏に師事
個展
2019 中村修一陶展(cafe福座 恵庭市)
2018 中村修一個展(茶廊法邑 札幌市)
2015 中村修一個展(茶廊法邑 札幌市)
2013 中村修一個展(六花亭福住店 札幌市)
©Eiji Sugawara
emerge
林 亨 Toru Hayashi 「心を浮かべて(みずのもり)」
「心を浮かべて」というシリーズ作品は、心の進化論という説を知ったことから始まりました。それは、心の存在が大きくなるにつれて、心を使った文字が増え、言葉も増えた。そこから、概念の気づきという現象が起こったというものです。絵画でも、同様な経験が出来ないか考えながら制作しています。さらに今回は、イコロの不思議な森で、水と心をつなげる試みをしようと思っています。
主な企画展 グループ展など
2019 北海道・黒龍江省国際交流美術展 (北翔大学札幌円山キャンパスギャラリー 札幌市)
札幌のアーチスト50人展」 (ギャラリーレタラ 札幌市)
「19-20展」 (さいとうギャラリー 札幌市)
CROSSWAVE2019 (櫟画廊 東京都)
局地風 (ポルトギャラリー 札幌市)
2018 CROSSWAVE2018 (コンチネンタルギャラリー 札幌市)
2017 CROSSWAVE2017(櫟画廊 東京都)
2015 絵画の未知数(ギャラリーレタラ 札幌市)
個展
ギャラリーミヤシタ(札幌市) ギャラリーどらーる(札幌市) 大丸藤井セントラルスカイホール(札幌市)アートスペース 羅針盤(東京都) ルナミ画廊(東京都)ギャラリー葉(東京都) La galerie (フランスリヨン市)
ギャラリーウインズ(松戸市)
大学在学中にフォーマリズム絵画の影響を受け、以降、絵画性にこだわりながら作品発表してきた。東京、札幌、フランスな どでの個展、グループ展、コンクールで作品を発表している。これまで、「MOVE」「ING」「眼を閉じて」などのシリーズ作品を発表。現在は「心を浮かべて」と題したシリーズを制作。とくに、水、岩、聖地などを主なモチーフにしている。
現在 北翔大学教育文化学部芸術学科教授
森の学校ギャラリーリー
Garden Cafe チセ
「心を浮かべて(みずのもり)」
菱野史彦 Fumihiko Hishino「生命の廻廊」
イコロの森にそそがれる木漏れ日、流れる風、時に降り注ぐ雨。当然そこにたたずむ作品にも同じように日が当たり風に吹かれ雨に打たれてしまう。
しかしその時々に見せる表情は私たちに様々な感情を思い起こさせる。大きな視点で見たときこの大きなうねりは感情の起伏を思い起こさせるかもしれない。反対に小さな視点で見たときそこにはなにが見えてくるだろう。そこには日差しと日陰、雨が当たり流れる水滴とそれを避ける場所そして流れる風がある。
ひょっとしたら何かしらの生き物が利用してくれるかも知れない。いずれは風化し朽ちてしまうような僕の作品が、もし森に受け入れられたならこの上ない幸せを感じるだろう。
主な企画展 個展など
2021 道銀芸術文化奨励賞受賞作家展 ( 道立近代美術館 / 札幌 ) 2019 夏のはじまり/夏のおわり展 /グランビスタギャラリーサッポロ 菱野史彦個展 Structure of Phenomenon/らいらっく・ぎゃらり 二人展 菱野工房展/石の蔵ぎゃらりぃはやし 2018 New Year Selection 2018/アートポイント(東京) 二人展 Rhomboidal Exhibition/石の蔵ぎゃらりぃはやし 2018 第27回道銀芸術文化奨励賞受賞記念 菱野史彦展STRUCTURE OF THE PHENOMENON 2017 道民芸術祭/札幌市資料館
2015 つながろう展(’16,’17,’18,’19)/札幌駅前通地下広場 道展90周年企画展/北海道⽴近代美術館 2014 第89回 道展会友賞 札幌国際芸術祭連携事業Gallery Retara企画展
「レタラ野外前線」The Front Line of Open Air Exhibition札幌芸術の森企画展「Sprouting Garden-萌ゆる森-」
「生命の廻廊」
八子直子 Naoko Yako「鎮守」
一つのシリーズに人間の営みから森を思うと
いうことをテーマに作品作りをしています。
生活する隣にはいつも森が存在する。
その日常の営みの中で
私たちは森からもたらされる満ち足りた幸福と時に暗黙たるルールから逸脱した時なのだろうか、恐ろしいほどの畏怖の両方を常に感じながら生活をする。私には子どもがいて、あるときから繋いだ手を離して単独で遊びや学びに外へ出て行くようになる
その先に森がある。そこが自然の森か人間の森かそれはわからないけれど、親としての自分は子の無事と安全を願うための祈りの塔を建てる。
森への感謝と畏怖の気持ちをこめて鎮守する。
生活する中で生じる事柄やモノなど実際に目にでき手にすることのできるような
「実在するもの」に記憶と思念などの目にできないものを加えて、2次元或いは3次元の空間で組み合わせ再構成する。
また そこに昇華の意味を形として内在できないかということを、いつも考えている。
主なグループ展・企画展
2021 北海道銀行創立70周年道銀文化財団創立30周年記念
道銀芸術文化奨励賞受賞作家展
第8回 春待つ北の雛祭り×アート2021 当別郵便局/当別
2020 札幌ミュージアム・アート・フェア2020-21 本郷新記念札幌彫刻美術館/札幌
髙橋靖子 八子直子 會田千夏 at GALLERY門馬/札幌
2019 谷口明志 長谷川裕恭 八子直子3人展 茶廊法邑/札幌
つながろう展(17,18) 地下歩行空間/札幌
2018 2+2北海道・光州美術交流展 ギャラリーレタラ/札幌
JRタワー・アートプラネッツ・グランプリ2018 JRタワー・プラニスホール/札幌
八子直子 鴻上宏子 會田千夏3人展 ギャラリーエッセ/札幌
2011 札幌美術展「Living Art―日常―」 札幌芸術の森美術館/札幌
2009 水脈の肖像09日本と韓国、二つの今日(06も) 北海道近代美術館/札幌
2007 絵画の場合 札幌アリアンス・フランセーズ、ポルトギャラリー、CAI/札幌
2006 A ☆ MUSE ☆ LAND 2006 スイート・メモリーズ 北海道近代美術館/札幌
2001 HIGH TIDE-ラディカルな意思の現れ 北海道近代美術館/札幌
おもな個展
2005 時計台ギャラリー/札幌
2009 アートホール東洲館(15も)、うなかがめーゆ美術館/深川
2014 さいとうギャラリー/札幌
2016 茶廊法邑/札幌
2019 「けしき」 ギャラリーミヤシタ/札幌
2020 第29回 道銀文化奨励賞 受賞記念 「回顧述」 らいらっく・ぎゃらりい/札幌
受賞
2019 北海道銀行芸術文化奨励賞
1998 古瀬キヨ記念北海道女流選抜展大賞
1994 古瀬キヨ記念北海道女流選抜展奨励賞
©Eiji Sugawara
「鎮守」
「共生」の森―「イコロの森ミーツ・アート2021」によせて ②
さて、それでは出品作家と作品について見てゆきたい。本展の出品作家は、會田千夏 、五十嵐ユースケ、上ノ大作、川上りえ、キシモトユキオ、澁谷俊彦、中村修一、林亨、菱野史彦、八子直子の10名である。このうち澁谷、中村、菱野は2019年の第1回展に続いての参加。會田、五十嵐、川上、キシモト、林は2020年のWeb展からの参加となった。菱野はWeb展には参加していないので、3回すべてに参加しているのは澁谷と中村の2名だけということになる。第1回展が5名だったのに対して、Web展では10名となり、このまま拡大する方針かと思いきや、第3回展でも10名が維持された。歴史が証明しているように、この種の展覧会は拡大するにつれて大味となり、初志も失われてゆきがちである。あくまで少数精鋭を「厳選」して臨むのは、初志を貫徹しようという澁谷の強い意思の表れだろう。
メイン会場の森に足を踏み入れると、まず菱野史彦の《生命の廻廊》が出迎えてくれる。連結された平行する2本の鉄の帯が、波打ち、ねじくれながら、メビウスの帯を想起させるいびつな円環を成している。円環は菱野が得意とするモチーフで、第1回展でも円環を垂直方向に屹立させた《巡る》を出品していたが、筆者にはその正円の造形が、内向性や閉鎖性を助長しているように見えてしまう点が気がかりであった。しかし本作では、《巡る》と同様に円環を基本としながらも、三次元的に躍動するフォルムによって、周囲の空間との接点を手探りで探るような調和への意思がより強く感じられた。シラカバに巻きつけるようにした配置も、筆者には好感が持てた。この現場に立った菱野が感じた光や風、木々の息吹を追体験するような爽やかな感覚が得られ、本展の冒頭にふさわしい作品であるように思われた。
菱野の作品越しに林の奥へと目を向けると、キシモトユキオの《わたしのいばしょ》の威容が目に飛び込んでくる。鳥籠を模した巨大な造形もさることながら、生の木材の色が林のなかでひときわ異彩を放つ点が、まずは興味深かった。本作の根底には、世界のどこかに外界と隔絶した自分だけの居場所があり、そこで息を潜めていれば災禍はやがて去りゆくという希望に満ちた物語がある。しかし、それが希望のようで実はそうではないことは、他ならぬキシモト自身が知っている。コロナ禍をやりすごす最善の手段はすべての交わりを断つことに違いないが、《わたしのいばしょ》が出入り可能な格子状の構造によって外界とのつながりを保ち、灯火が自分の位置を知らせる灯台のごとく籠の頂に灯されているのは、それが原理的に不可能であり、また決して幸福な方法ではないことの暗示だろう。メルヘンチックな造形とは裏腹に、現実世界のジレンマを鋭く突いた作品と言える。
倒木によって跡づけられた森の道―これは順路であると同時に、道以外の場所を来場者がいたずらに踏み荒らさないようにするための結界であると思われる―をたどり、さらに奥へと踏み入ってゆくと、八子直子の《鎮守》に行き着く。倒木で囲われた一角に、古びた椅子やその座板を並べた参道、木箱の祠、枯れ枝を積み上げた築山などが設けられ、原始的な祭祀場のような体を成している。所々に散りばめられた小さな丸い鏡や、蔓に巻きつけられた毛皮などが呪術的な雰囲気をさらに助長する。八子は本作に森への感謝と畏怖の気持ちを込めたというが、むしろ筆者が強く感じたのは、子どもの秘密基地遊びにも似た、自分が望むままの世界を創造しようとする遊戯性である。子どもの遊びには原初的な宗教的情操が表れるとしばしば指摘されるが、本作を眺めると、森の懐に抱かれながら自由に戯れる八子の姿が目に浮かぶようである。《鎮守》を左手に眺めつつさらに進むと、木々の合間を縫って、再び生の木の異彩が目につく。
上ノ大作の《NET Work》である。三角錐を基本単位とした角材によるフレームワークに様々な色の糸を張り巡らせた本作は、上ノが近年手がける「Nest」シリーズの亜型にあたる。従来の「Nest」シリーズでは、主に竹ひごなどの硬質かつ弾性の高い素材を用いて、空間全体にはびこるようなダイナミックな立体造形を組み上げてきたが、本作では糸を用い、範囲も角材のフレームワーク内に限定して、閉鎖的な造形とした。蜘蛛の巣からの着想ということだが、上ノ自身も言及しているとおり、インターネットやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などの現代的な種々のネットワークも含意していることは明らかである。自生する木々の間にではなく、あえて周囲とは異質のフレームワーク内に糸を張り巡らせたのは、ネット世界の虚構性とそこに漂う閉塞感を視覚的に表現するためだろう。
五十嵐ユースケの《気付きの網》は、奇しくも上ノと同様に、「ネット」を題材とした作品である。ただし造形的には全くの対極で、周囲の空間との異質さを全面に出した上ノに対し、五十嵐は透明なテグスを用いて、注意しなければ見逃してしまう蜘蛛の巣のように、風景に溶け込むような作品とした。筆者が会場を訪れたのはちょうど雨の日だったため、雨滴をまとって本物の蜘蛛の巣のように美しくきらめく様子が印象的だった。五十嵐によると、これは此岸と彼岸との越境を防ぐ「セーフティーネット」であるとのことである。しかし、はたしてそうだろうか。網を織りなす糸はあまりにも細くて見落としがちであるし、網目からのぞく彼岸の風景は魅惑的だ。よく見ようと近づくことで、知らぬ間に越境していることもあり得よう。越境を誘う美しい罠。筆者には、そんな剣呑さを秘めた作品であるように感じられた。
五十嵐の対岸、森をぐるりと周遊する順路の内側には、中村修一の《emerge》の空間が広がる。中村は背丈の低い下草が密生するエリアを選び、植物の種や芽、胞子などを想起させる黒い陶のオブジェを、地面や倒木の上に配置した。型などを用いていないため、同じ形のオブジェはひとつもない。その不揃いな様子は、種として同一でありながらもわずかな遺伝情報の違いによって個体差が生じる、生命現象へのオマージュとも受け取れる。個々のオブジェの造形や設置方法は、中村がこの数年続けているスタイルの延長と見てよいだろう。ただし、第1回展ではオブジェを地面から10〜20cmほどの高さに配列してその存在を誇示していたのに対し、本展では、下草と一体化するほどの高さとして、環境との調和を目指した。継続してこの森と触れ合うことが中村の心境に「共生」への志向をもたらした証左として、興味深い変化だった。
中村と隣接したエリアに作品を展開したのが、澁谷俊彦である。第1回展に引き続き本展にも、ライフワークのひとつであり、「共生」や「生命循環」をテーマとした「Generation」のシリーズで臨んだ。苫小牧市周辺の森林土壌の多くは、1667年の樽前山の噴火による厚い火山礫層の上に10cm~100㎝未満の表土しか堆積していない未熟土のため、樹木が深く根を張ることができず、自重や風によって頻繁に倒木が生じ、倒木更新も盛んに起きる。入念な調査でこうした特質を突き止めた澁谷が、「イコロの森」を「Generation」の恰好の舞台としてとらえたのも自然な道理だろう。
本展の《Generation2021 origin-birth》の手法も、赤、青、黄 ピンクなどに彩色したプッシュピンやゴルフティーを、菌や粘菌、昆虫などの卵に擬態させるかのように倒木や地面に配置する、従来の「Generation」と同様である。彩色があまりに鮮やかなために初見では違和感が先に立つが、実際に配置されたピンの周辺を見渡すと、自然界にも同様の色彩が存在することに驚かされる。実際にその現場で筆者は、倒木に張り付く青い粘菌を、澁谷の作品の一部と見間違うことさえあった。澁谷の細かな自然観察の賜であるし、鑑賞者にこうした気づきを与えることも本作の主眼のひとつであろう。あたかも、自然に寄り添うためにはまず自然を知ることが肝要であると、澁谷に呼びかけられているようである。本展のテーマ「共生Symbiosis」を象徴する作品として、これ以上ふさわしい作品はあるまい。
おびただしい数のピンを追って地面や倒木を這わせた視線をふと上げると、森の最奥を飾る川上りえの《Flat and Dynamism》に気がつく。木々の幹の一部を青く染めたこの作品に違和感なく入り込むことができるのは、あらかじめ澁谷の作品によって色彩の感受性が高められたせいでもあるだろうが、なにより、広大な範囲の木々をキャンバスに、地面から同じ高さの部位を彩色して、森のなかに一本の水平線を出現させた作家の自由な想像力に引き込まれるためだろう。この水平線の構想自体は、2020年のWeb展の《Sea Level Rize》にすでに原型を認めることができる。タイトルの通り水面の表現を試みたもので、かつてこの地が海の底であったと仮想して、その虚構世界の状況を可視化した作品であった。《Sea Level Rize》では水平線に黄色を用いていたが、本作では青色を用いてさらに水の印象を強めた(なお本作の彩色には、自然に害のない素材が選ばれていることを、念のため付言しておく)。それにしても、川上以外に誰が、この森の中で海を思い描くだろうか。虚構と現実をたやすく横断する作家の想像力には脱帽させられる。
「イコロの森ミーツ・アート」は基本的には野外美術展として開催されているが、本展では、平面の作家も招き入れるためか、屋内の展示空間も用意された。会場となったのは「イコロの森」内の体験型研修・交流施設「森の学校」とガーデンカフェ「チセ」である。
「森の学校」に足を踏み入れると、會田千夏、キシモトユキオ、林亨の3名の作品が、窓外の森の景色を背景に、穏やかなハーモニーを奏でていた。林の《心を浮かべて(みずのもり)》は、その名の通り水を想起させる作品である。ただしそれは、雨や川、水たまりのように目視できる水ではなく、木々の内部に蓄えられた水、地面に染み込む水、水蒸気として空気中を漂う水のように、心に思い描くことでしかその存在に到達できない水の姿を描いたもののように思われる。林は他にも「チセ」の壁面に作品を展示しているが、とりわけ「森の学校」の大窓を挟んで展示された2枚の大作が、森の木立をサーマルカメラで撮影して得られた映像のようにも見えて興味深かった。本作を、人の視覚では捕らえきれない水の姿を、異なる視覚のシステム―心の目とでも言うべきか―で暴露しようとする試みであったとするのは、想像がすぎるだろうか。また本作には、林の作品にしばしば登場するドットも描かれている。林は、光のきらめきか、水の分子を想起させるそのドットを木球に置き換えて現実の空間に出現させ、それを窓外の地面に散りばめることにより、窓から見える景色を自身の作品と化した。絵画の空間と現実の空間、内の世界と外の世界とを交錯させるこの方法は、林の新機軸として注目しておきたい。
會田の《星の足跡》も林と同様に、窓を通じて内と外との交錯を生む作品であった。窓を挟んで置かれた木の枝が、その装置としての役割を果たしている。會田の視線の誘導は巧みである。景色の美しさにひかれて「森の学校」の大窓に近づこうとすると、否応なしに、視線の高さに設置された平面のオブジェに目が留まる。描かれているのは閉じた瞳か、果実か、はたまた獣か。答えを探してさまよう視線を、今度は、腰元ほどの高さの木の枝が下へと誘う。しゃがみこんで枝に視線を這わせると枝先の綿に気がつき、自然に、窓外の枝先の綿へと視線が移る。雑然とした列を成す窓外の枝の行く先を探ろうとすると、やがて視線は森の奥へと吸い込まれてゆく。視線の動きと連動して次々に物語が展開する仕掛けは、一冊の絵本のようで秀逸である。枝先の綿による表現が、八子が枝先につけた丸い鏡による表現と似通っているのは偶然だろうか。先に筆者は八子の作品に遊戯性を感じると指摘したが、あるいは會田の作品も同様の性質を持ち合わせているのかもしれない。キシモトは野外に設置した《わたしのいばしょ》のミニチュア版と、代名詞的な作品の《月のかけら》を持ち込み、林と會田との空隙を埋めた格好だ。とりわけ《月のかけら》と、會田の《星の足跡》との親和性は高く、本展のキュレーションの妙が垣間見える場面となっていた。
こうして総覧してみると、本展では、会場の隅々にまで「共生Symbiosis」というテーマが浸透していたことがわかるだろう。ただしその表れ方は多様であった。例えば澁谷と川上のように、作品としては全く別種のものではあっても、色彩的なつながりによって互いの作品をより豊かに見せあう共栄のような場合もあれば、上ノと五十嵐のように、モチーフへの関心が響き合う共鳴のような場合もあった。意識的に実現された「共生」もあれば、無意識的偶然的に生じた「共生」もあっただろう。いずれにせよ、「イコロの森」への澁谷の共感と、この場で野外美術展を実現するべく奔走した澁谷と作家たちとの協同が実を結んだ結果である。素直に喝采を送りたい。
他方で今後の展望として、そもそも「共生」が、親和的な関係ばかりを指すわけではないという点には、留意しておかなければならないだろう。現に「ウィズコロナ」の時代を生きる我々は、いつ崩れるかもわからない危うい均衡を、日々の闘争によりなんとか維持しながら、ウイルスと「共生」しているわけである。そしてまた、歴史的に見れば、美術団体の集合と離散の繰り返しが、我が国の美術の進展を後押ししてきた側面が少なからずあったことからもわかるとおり、反発し、敵対することは、時に大きな推進力となり得るのである。そうした観点からすれば、本展には、競い合い、高め合うという関係―あるいはこれを「競生」と呼ぶことが許されるだろうか―がやや希薄に見えた。
無論本展が、親和的な関係を生むことばかりを目的としていたわけではなかったことは、中村の森と一体化するような作品を中心に据える一方で、威容を誇るキシモトの作品をも許容する寛容さを示した例などからも、明らかである。そしてそのことは、本展の大きな希望に違いない。本展はまだ若い森である。今後ともそうした多様性を維持しながら、必要とあれば倒木更新を繰り返し、同じ方向に向かって伸びゆく豊かな森となることを願いたい。
門間仁史(もんまさとし/北海道立旭川美術館主任学芸員)